116:かつて愛した人の事を忘れられるわけがない。彼も……私も……

彼に聞いてみました。

 

私「ねぇ……別居していた時、離婚するつもりだったの?」

彼「いや……僕はそう思っていなかったけど、
奥さんはそう考えていた……のかもしれない。
僕たちの間にはいろいろあったから」

私「奥さんの病気はいつ知ったの?」

彼「ホスピスに入院した時だよ」

彼「彼女の面倒は彼女の家族が見ていたんだ」

 

彼は前を向いたまま静かに話しました。

彼「彼女は子供を亡くした後にキリスト教に改宗したんだ。
彼女が自ら命を絶たないように。
でも、子供を亡くした事で不安定になったりして、
……彼女も辛かったんだ」

私「愛情はあったんでしょ?」

彼「愛情はあったよ。
でも……何もしてあげられなかったという後悔のほうが大きいんだ」

私「……今でも、忘れていないんでしょ?」

彼「……忘れられるわけがない」

私「それはよく分かるよ。私も……そうだから」

 

彼は愛情よりも罪悪感のほうが大きい。
私が想像していた以上に。

 

彼が奥様の事を忘れていない事は分かっていました。
多分、彼も私が夫の事を忘れていない事は、分かっています。

 

思い出だけしか語れませんが、亡き人を想う気持ちはそのまま。
リアルで好きな人がいても……です。

 

死別者同士の恋愛は、こういう複雑な事も絡んできます。

 

彼の心の中に奥様が存在している。
でも、それは責める事はしません。
奥様に嫉妬もしません。

 

……嫉妬しても仕方がないし、どうやっても勝てないですからね。

「忘れられない」と言った彼。

 

それでも好き。

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