147:「娘の遺志だから」という盾……

「彼女が別居を申し出た時は、既に発病していたと思うんだ。
ホスピスには2回ほどお見舞いに行ったんだけど
途中から面会を断られてしまった。
彼女からも『もう来ないで』と言われたんだ」

 

でも彼は最期には立ち会えたみたいでした。

 

「ホスピスの面会を断られた時『娘の意思』だからと言われたんだ。
そして、彼女が亡くなった後は『娘の遺志』だからと。
『死人に口なし』だから、もう確認もできない。
そう言われちゃうと僕には何もできなかった」

 

「彼女のお葬式の時、喪主は誰だったの?」

「彼女のお母さんだった」

「……お墓は……?」

「お寺の場所と名前は知っているよ」

「年忌法要には呼ばれていない……?」

「うん。呼ばれたことがない」

「ねぇ、お子さんのお墓はどこにあるの?」

「僕の実家のお墓に入っているよ」

「奥さんとは別々になっちゃったんだ……」

 

これでは、彼があまりにも気の毒だ……と思いました。
でも、それを口に出してはいけないような気がしました。

 

「ごめんね。こんな話題を持ち出して……」

「大丈夫だよ」

 

奥様が亡くなった後、奥様の兄妹や親に責められたという彼。
まさか、これほどまでだったなんて……。

 

批判を全て受け止めて、一人で耐えて
10年以上一人孤独に生きてきた彼。

 

彼は責められるのは慣れていると言いますが
私はそうしたくないです。
これからも、ずっと。

 

今は彼に会う日は少ない。
でも、それについて彼を責めたら
彼は逃げ場がなくなってしまう……かもしれません。

 

責める気持ちは全くないのですが……。

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